乳がんの治療では、乳房内でのがんの広がりや、脳への転移を調べるためにMRIを撮ることがよくあります。
CTより細かく見えて、放射線を使わないので被ばくもありません。一見「万能」に見える検査ですが、実はいくつか弱点があります。
その弱点は、MRIの仕組みを知るととても分かりやすくなります。まずは仕組みから見ていきましょう。
MRIの仕組み
実は、人の体は小さな磁石でできています。
ふだんは向きがバラバラなので、お互いに打ち消し合って、磁石としては働いていません。
そこに登場するのが、MRIというとても強い磁石です。
MRIの中に入ると、体の中の小さな磁石たちが、その向きに少しだけそろいます。
でも実は、その磁石たちは、コマのようにフラフラと動いています。
そこに特別な電波を当てると、バラバラだった動きが、一瞬だけ「同じタイミング」にそろいます。
しかし、その揃いは長くは続きません。すぐにまたバラバラに戻っていきます。
MRIは、この「そろってから崩れる」という変化を電気信号として読み取り、画像にしています。放射線を使わないので、被ばくはゼロです。
なお乳房のMRIでは、大きなトンネル状の装置にうつ伏せで入り、乳房を専用の穴に入れて、カチカチと大きな音がするなか、20〜40分ほど動かずにじっとして撮影します。
なぜ乳がんでMRIを撮るの?
乳房MRIには、マンモグラフィやエコーでは見えにくいことを確認する役割があります。
MRIで分かること
- がんの正確な大きさ・広がり
- 同じ乳房内に「他にもがんがあるか」(多発しているか)
- 反対側の乳房に異常がないか
- 周囲の組織(皮膚・筋肉)にがんが広がっていないか
- 乳管の中をどこまで進んでいるか
これらは、手術の方法を決めるうえでとても大事な情報です。「部分切除か全摘か」「どこまで切除するか」といった判断に役立ちます。
「造影」MRIとは
乳房MRIは、ほとんどの場合「造影剤」を使って撮影します。
造影剤は、検査前に点滴のような形で腕の血管から入れます。
MRIの弱点
被ばくがなく細かく見えるMRIですが、次のような弱点があります。
MRIの弱点
- 撮影に時間がかかる(乳房だけで20〜40分、全身なら1時間程度)
- 1日に撮影できる人数が限られる
- 呼吸などの動きに弱い
- 肺のように空気が多い臓器は苦手(信号の元になる水素が少ないため)
- 装置が高価で、設置できる施設が限られる
- トンネルの中に入るため、閉所恐怖症の方はつらいことがある
- 強い磁力を使うため、体内の金属や、金属粉を含むネイル・入れ墨などは注意が必要
特に肺のような空気の多い場所は苦手で、全身をくまなく調べるのには効率がよいとは言えません。
金属・閉所恐怖症・造影剤は事前に申告を
強い磁石を使うため、体内に金属があると検査ができないことがあります。心臓ペースメーカー(条件付きで対応できる機種もあります)、人工内耳、動脈瘤クリップ、手術や事故で体内に残った金属片、入れ墨・アートメイク(鉄分を含む顔料があります)などは、事前の問診で必ず確認されます。
閉所恐怖症の方も申告すれば、開放感のある「オープン型MRI」が使える施設もありますし、必要なら鎮静剤を使うこともできます。造影剤で過去にアレルギーが出たことがある方も、忘れずに申告してください。
MRIで「他にも怪しいところ」が見つかったら
MRIは感度が高いぶん、反対側の乳房や同じ乳房内の別の場所に「怪しい影」が見つかることがあります。
これを「追加所見」と言いますが、実際に追加で組織検査をしてみると、多くは良性のことがほとんどです。ただし、追加の検査が必要かどうかの判断は出てくるので、主治医とよく相談しながら進めていきます。
CTとMRIは「役割分担」
MRIは万能ではありません。肺は苦手ですし、全身チェックには時間がかかりすぎます。
一方で、乳房内でのがんの広がりを詳しく見るのはとても得意です。
まとめ
※この記事は一般的な医学情報です。実際の治療方針は、病状、検査結果、体調、価値観によって異なります。必ず主治医と相談してください。