「乳がんを理解するには、まず乳房がどんなふうにできているかを知っておくと、ぐっと分かりやすくなります。」
主治医の先生からこんな話を切り出されることがあります。実はこれ、本当にその通りで、乳房の中身を知っているのと知らないのとでは、これからの説明の入り方がまったく違ってきます。
ここでは、ふだんあまり意識することのない乳房の中身について、ゆっくり見ていきましょう。
乳房の中身は「アリの巣」のように張り巡らされている
乳房の中身は、まるでアリの巣のような構造をしています。
- 小さな部屋の集まり(=「小葉」、ミルクを作る場所)があちこちに散らばっている
- それぞれの部屋から細いトンネル(=「乳管」、ミルクの通り道)が伸びて、乳頭(にゅうとう)に向かって集まっている
アリの巣のように張り巡らされたミルクの通り道と、その先端で枝分かれするミルクを作る場所、この2つを脂肪と結合組織がふっくらと包みこんで、乳房のかたちを作っています。
乳がんはどこから生まれるのか
乳がんの90%以上は、乳管(ミルクの通り道)の壁を覆っている細胞から発生します。残りの数%が、小葉(ミルクを作る場所)の壁の細胞から発生します。
つまり、ほとんどの乳がんは、ミルクの通り道の「内側の壁」から始まる病気なのです。
乳房の周りには何があるか
乳房の中身を知るうえで、もうひとつ大切なのが「周りに何があるか」です。
大胸筋(だいきょうきん)
乳房の奥には、胸の大きな筋肉である大胸筋があります。乳房そのものは大胸筋の上に乗っかっている、というイメージです。
手術のとき「乳房を全部とっても、筋肉までは取らない」という説明を受けることがあります。これは、現代の乳がん手術では原則として大胸筋を残すからです。昔の「ハルステッド手術」のように筋肉まで切除する手術は、もう行われていません。
リンパ管とリンパ節
乳房の中には、血管のほかに「リンパ管」という細い管がたくさん走っています。リンパ管は体の老廃物や免疫細胞を運ぶ通り道で、要所要所に「リンパ節」という関所があります。
乳房から流れたリンパ液は、まず脇の下のリンパ節(腋窩(えきか)リンパ節)に集まります。乳がん細胞が乳房から飛び出したとき、最初に流れ着くのもここです。
だから、乳がんの手術では、乳房だけじゃなくて脇の下のリンパ節も一緒にチェックするんだ。詳しくは No.1007 リンパ節とは で解説するよ。
皮膚
乳房を覆っている皮膚も、実は乳房の一部として治療の対象になります。
乳がんが進行すると皮膚にむくみや変色、引きつれが出ることがあります。逆に、皮膚に近い場所にがんがあると、手術で皮膚も一部切除する必要が出てきます。
「乳腺密度」という言葉
検診で「乳腺濃度が高い」「高濃度乳房」などと言われることがあります。
これは、乳房のなかで「小葉や乳管などの組織(=乳腺)」と「脂肪」のどちらが多いかを表したものです。
乳腺濃度の4つの分類
- 脂肪性:ほぼ脂肪(マンモグラフィで真っ黒に見える)
- 乳腺散在:脂肪のなかに乳腺がぱらぱら
- 不均一高濃度:乳腺が多めで、所々に密集
- 高濃度(極めて高濃度):乳腺がぎっしり詰まっている
若い方や閉経前の方は、乳腺濃度が高い傾向があります。閉経後は脂肪に置き換わって、徐々に低くなっていきます。
左右で大きさが違うのは普通のこと
乳房は左右で完全に同じ大きさ・かたちというわけではありません。多くの方が、わずかに左右差を持っています。
ふだんから左右差があるのは心配ありませんが、「最近になって急に左右差が目立ってきた」「片方だけ硬い場所がある」というときは、念のため受診をおすすめします。
まとめ:乳房は「母乳の工場と配管」がぎっしり詰まった臓器
ご自身の乳房の構造をなんとなくでもイメージできるようになると、これから出てくる手術の説明や検査結果が、ぐっと立体的に理解できるようになります。
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この記事に必要なイラスト
No.1001で使った乳房の断面図(/illust/1001-02-breast-anatomy.png)を再利用しているため、新規イラストはありません。
将来追加するなら:
- 乳房の周辺構造(大胸筋・リンパ節を含む断面図)
- 乳腺濃度の4分類のビジュアル比較
すべて「文字なし」「淡い水彩」で。